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裸心版 2023年度

印刷用ページを表示する更新日:2023年5月31日更新

小田町長の裸心版 2023年度

○裸心版とは・・・

このタイトルは、町長としてのさまざまな体験を通じて感じたことを着飾らずに素直に『裸の心で発信』することで、町の進むべき道を皆さんにも考えてもらいたいという思いから「裸心版」としました。

※「羅針盤」は、船や航空機などで方位を知るための器具で、大航海時代の幕を開く重要な航海計器。

※広報おおいに掲載した原稿をWeb用に改稿して掲載しています。2カ月に1度程度の頻度で更新する見込みです。

第1回 2023年 5月 こいのぼり伝説

 5月こどもの日と聞けば、二つの「こいのぼりの歌」を思い起こす。
 1曲目は、「甍の波と雲の波 重なる波の中空を 橘かおる朝風に…」で始まる文部省唱歌「鯉のぼり」であり、もう1曲は「屋根より高い こいのぼり 大きい真鯉はお父さん…」で始まる童謡の「こいのぼり」である。
 一つ目の歌は大正時代に作られたものとされ、今はあまり使用されないわかりにくい言葉の文語体で、もう一方の曲はわかりやすい口語体で作詞されている。どちらも共通しているのは男の子が健康に育つことを祈っていることのようだ。

 中国の故事に、黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を多くの魚が登ろうと試みたが、鯉のみが登り切り竜になることができたという伝説があり、大変な競争に勝ち残った人を「竜門を登った」といい、成功のための関門を「登竜門」というようになったとのことである。それゆえに「こいのぼり」をあげるのは、わが子に鯉のように体も心もたくましく成長して社会で成功してほしいという願いからとのことである。

 ところが、少し調べてみたら全国には、「こいのぼりをあげない」という地域がいくつかあるようだ。いずれも言い伝えではあるが、大変興味深く感じた。
 そのうちの一つは、埼玉県北西部の矢納地区(神泉村)に今も残る「平将門」伝説である。「平将門が城峯山に立てこもっているとき、矢納のある家であげたのぼりで所在が敵に知れてしまい、将門は戦に破れた。こいのぼりをあげると、その家には不吉な出来事が起こる」との言い伝えが代々伝わり、こいのぼりをあげていないとのことである。その他にもさまざまな伝説があるようだが、なかでも興味を感じたのは、本町と同じ名前の京都府亀岡市大井町にある大井神社の伝説である。大井神社では、祭神が鯉に乗って保津川の急流を上ってきたという伝承から鯉が神の使いとされ、氏子が鯉に触れることを禁じている。そのため大井町では端午の節句に「こいのぼりはあげない」とのことである。こんなに時代が進んでも言い伝えを守り続けるって、なんだかとても面白いなと感じるところである。

 それにしても、現在では住宅事情や少子化からなのか、屋根より高いこいのぼりをあまり見かけなくなってしまったが、時代の流れや生活様式の違いはあれど、子どもの健康と健やかな成長を願う気持ちは今も昔も同じなのである。