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裸心版 2022年度

印刷用ページを表示する更新日:2022年7月11日更新

小田町長の裸心版 2022年度

○裸心版とは・・・

このタイトルは、町長としてのさまざまな体験を通じて感じたことを着飾らずに素直に『裸の心で発信』することで、町の進むべき道を皆さんにも考えてもらいたいという思いから「裸心版」としました。

※「羅針盤」は、船や航空機などで方位を知るための器具で、大航海時代の幕を開く重要な航海計器。

※広報おおいに掲載した原稿をWeb用に改稿して掲載しています。2カ月に1度程度の頻度で更新する見込みです。

第2回 2022年 7月  ダンゴムシの迷宮脱出方法 

 もうすぐ4歳になる孫が指につまんで私に見せに来たものは、なんと「ダンゴムシ」であった。
 私にとっては直接素手でつまむ気にはなれない虫だったが、興味津々の幼子に「汚くて気持ち悪い」という勝手な先入観を与えてはいけないと思った。そのため「まん丸になっているね、足がいっぱいあるね、よく見つけたね、どこにいたの、なんという名前だろう」などと興味を示し一緒に観察した。その後、見つけた場所に案内され石をどかすと、ダンゴムシがうじゃうじゃ、おまけに小さなナメクジらしきものまでいた。じめじめした場所は不潔そうで触る気にもならなかったが、結局捕獲を手伝うことになった。数匹だけにしてもらい、ガラス瓶容器に入れてあげた。家に持って帰ろうとしたので「このままではおなかがすいて死んでしまうよ、ダンゴムシは何を食べるのかな」ということになり、調べた結果、捕獲場所にあった枯れ葉や台所の野菜くずを入れた。
 調べた記事にはダンゴムシの生態や習性などが書かれていた。面白くなって調べ続けると「ダンゴムシの交替制転向反応」という言葉が出てきた。私には初耳の言葉だった。簡単に説明すると、迷路に入れたダンゴムシは、最初の分岐で右に曲がると、次は左、その次は右というように、高確率で左右交互に曲がる習性があるのだ。天敵から逃げるための行動だとか、広範囲に餌を探すためなどと考えられているようだ。その他に、右にばかり曲がっていると元の場所に戻る確率も高く、窮地からの脱出も困難になるためという説もあった。
 人生には取るべき選択に迷うことが多々ある。行政運営もしかりである。一方を立てれば他方が立たない。価値観も多様化している。利害が対立したときに誰もが納得できる方策はあるのか。既存の価値観だけに頼っていたら、堂々巡りのジレンマに陥ってしまいがちだ。誰もが腑に落ちるような新たな価値観を発想できないものか。
 左右交互に進路を変えて迷路脱出を試みるダンゴムシに脱帽だ。

第1回 2022年 5月 舞台裏

 「浮世舞台の花道は表もあれば裏もある。花と咲く身に歌あれば 咲かぬ花にも唄ひとつ…嗚呼… 染みるねぇ…」こんな語りに乗せて演歌歌手が歌唱する「演歌の花道」というテレビ番組があった。独特な口調のナレーションが演歌特有の世界を醸し出していた。
 「演歌」という歌の起源は「明治時代の自由民権運動において政府批判を歌に託した演説歌の略」と書かれていた。私の知っている演歌とは歌としての役割が異なっていたことに驚いた。これは演歌が日露戦争頃から流行歌としての性格が強くなったためであった。その他に「日本人独特の感覚や情念に基づく娯楽的な歌曲の分類の一つ」とあり、「艶歌」や「怨歌」という言葉も見たことがあり、義理人情、男女の情愛、日本の地域性などをテーマとしたものが多く見られているため、この意味は理解した。古いやつだと思われるかもしれないが、私は演歌好きの中の1人である。小節をきかせたマイナーな曲調は情緒的で、歌詞には人生の悲哀となまめかしさを感じる。
 「浮世舞台の花道は表もあれば裏もある…」、演奏会や舞台などで、観客は役者などの表舞台の人間しか見ていないが、舞台裏では大道具、照明、音響など多くの人々が汗を流している。表舞台の華やかさは、舞台裏で働く人々によって支えられている。社会においても表舞台には出てこないが、それぞれの役割を裏で果たしている人々によって支えられている。
 最澄の残した言葉に「一隅を照らす。これすなわち国宝なり」という言葉がある。これはみんなが気付かないような片隅で社会を照らしているような人が、国の宝であるという意味だ。一つの小さな光がたくさん集まって私たちの暮らしや社会が成り立っている。一つひとつの小さな光は夢や希望、誇りなど、生きる喜びで輝いてほしい。その輝きこそいとおしい人生そのものだろうと思う。
 今朝の新聞では、ロシア軍のウクライナ侵攻による民間人への非人道的残虐行為が非難されていた。武力による理不尽な行為でかけがえのない光を消してしまったことに、悲しみと戦争の悲哀を強く感じた。一人ひとりの家族との暮らしやこれからの未来が容赦なく消されてしまった。 
 異論を排除する権力の怖さと醜さを見たようだ。